大判例

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東京地方裁判所 昭和34年(ワ)3494号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔事実と判断〕原告は、昭和三三年五月三〇日被告等所有の本件土地について当時の代表役員亀井行俊との間で、代金は一八、九九四、七八〇円とし、契約と同時に手付金一、八〇〇、〇〇〇円および右代金の内金三、二〇〇、〇〇〇円合計五、〇〇〇、〇〇〇円を支払うこと、被告等は残代金一三、九九四、七八〇円の支払を受けるのと引接えに原告に対し昭和三三年九月一〇日までに所有権移転登記手続をし、かつ本件土地上の建物を収去して本件土地を明渡すこと、右期限までに履行しないときは、昭和三三年九月一一日から履行ずみまで金一八、九九四、七八〇円に対する日歩五銭の割合による約定遅延損害金を支払う旨の売買契約をした。仮りに右売買契約が昭和三三年五月三〇日成立しなかつたとしても、同年八月一〇日に成立したと主張して、被告等に対し、右売買契約に基き、一三、九九四、七八〇円と引換えに本件土地の所有権移転登記手続、地上建物収去土地明渡および約定遅延損害金の支払を求め、その余の個人被告に対してそれぞれ不法占有なりとして建物退去ないし収去土地明渡を求めた。被告等は、右売買契約は亀井行俊が個人としてしたもので、被告等の代表役員としてしたものではない、と争つたほか、抗弁として、本件土地は被告等の境内地で基本財産であるところ、本件売買契約については、(一)責任役員の議決を欠いている、(二)被告等の規則二一条、宗教法人法二三条により、売買契約締結の一月前に信者その他の利害関係人に契約の要旨を公告することを要するが、かかる公告がなかつたから、同法二四条本文によつて本件売買契約は無効である、(三)被告寺規則二一条、宗教法人本門仏立宗規則三四条により、右売買契約には同宗(本宗)の代表役員の承認を要するところ、昭和三三年七月二一日いつたん承認が与えられたが後にこれが撤回され、結局承認なきに帰したから本件売買契約は無効である等の主張をした。原告は、右各抗弁に対し、宗教法人法二四条但書を採用して、仮りに右各手続が履践されていなかつたとしても、原告は右但書にいう善意の相手方に当るから、右各手続の欠缺による無効をもつて原告に対抗することはできない、と再抗弁した。

判決は、本件売買契約は昭和三三年五月三〇日主たる要素のとりきめがなされて成立したものと認めたが、これについては抗弁(二)の公告手続および(一)、(三)の各手続も終えていなかつたから無効であり、かつ少くとも(二)の公告手続については宗教法人法二四条但書の適用はないと解すべきであるとして再抗弁を排斥したが、さらに昭和三三年八月一〇あらためて本件土地につき原告主張のような売買契約が成立したと認定し、抗弁(二)の公告手続については、昭和三三年七月一二日から同年一〇月一五日頃までの間本件土地売却の要旨を掲示してなされたと認定したうえで、その効力を次のように判示している。曰く、

「(二)の公告については、前記認定のとおり売買契約の成立が八月一〇日であるに拘らず公告開始の日時が七月一二日である以上、右公告は契約成立の時点においては未だ法定の期間を一日欠くものではあるが、その一月前に公告を要するとの趣旨は、その間信者その他の利害関係人にその行為の要旨を周知徹底させ、異論のあるときにはその行為を取り止め、或は変更することを当局にうながす余地を与えることにあると解すべきところ、本件においては不足した期間が僅か一日であるうえ、全証拠を検討するも右公告後法定の一ケ月を経過し本件売買契約の成立した翌日である八月一一日に至るも結局右の趣旨での本件土地売却に対し信者その他の利害関係人から異論が出るとか、または売却を取り止め、或いは変更するための努力を代表役員たる亀井行俊がなし、または責任役員がその旨の議決をした事実はこれをうかがうことはできないから、右の事実をもつて売買契約の無効事由とはなし難いものというべきである。」

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